「日本語教育とわたし」

東京女子大学人文学科英語文学文化専攻卒業(2020年)
東京女子大学大学院人間文化科学専攻現代日本語・日本語教育分野修了(2023年)
五嶋友香

 わたしは、これまで日本語学校の非常勤講師や定時制高校での日本語指導員、VEC日本語活動(https://villaeducationcenter.webnode.jp/)、外国につながる子どもたちへのオンライン教科学習支などの活動をしてきました。2023年12月以降はJICA海外協力隊でパラグアイに日本語教師として派遣される予定です。

 今回は、わたしが日本語教育に興味を持った台湾での出来事と、台湾で学んだことが今のわたしにどのように活きているのかについて書きたいと思います。

 台湾での出会いと学び

皆さんは台湾へ旅行に行ったことがありますか?近年、台湾は旅行先のひとつとして注目を集めています。 

 2019年の2月、当時学部の2年生だったわたしは、日本語教員養成課程を受講していた学生・院生6名とともに、台湾で行われるフィールドワークに参加するために初めて台湾へ行きました。東京女子大学のほかに愛知大学と人間環境大学、台湾の東海大學の学生が参加しました。愛知大学や人間環境大学には中国語を学んでいる学生が多く、東海大學には日本語を学んでいる学生がほとんどでした。

 このフィールドワークは、各大学のメンバーで構成されたグループで数日間調査をし、最終日に成果発表をするというものです。フィールドワーク全体のテーマは「言語」でした。グループ活動では、中国語、英語、ベトナム語、台湾語の小グルーにわかれて、それぞれ活動をしました。わたしは「台湾語」(閩南語)グループになり、東海大學と人間環境大学の学生とともに台南市在住の方にインタビューをしたり、台中市の中学生と交流をしたりして、台湾語(閩南語)の使用状況について調査しました。

グループ活動で台中市の中学生と交流したときの写真

 台湾でのフィールドワークに参加して、わたしはいろいろなことを学びました。グループ活動での調査や結果もそのひとつです。すべてがわたしにとって貴重な経験であり、貴重な学びでしたが、特にわたしが身をもって学んだことがあります。それは、さまざまな人との出会いを通して、異なる価値観を共有することの大切さです。

 今回のフィールドワークで、東海大學、愛知大学、人間環境大学の学生をはじめ、台中市の中学生や台南市在住の方など、たくさんの出会いがありました。さまざまな人といろいろな話をしているなかで、自分とは異なる価値観を持っていることに気が付くこともありました。最初はそれに葛藤することもあったのですが、段々とそれをポジティブに捉えられるようになりました。わたしはこれまでも、日本で生活していたときや海外に行ったときに、異なる価値観を感じることがありましたが、ポジティブに捉えられたことはあまりありませんでした。しかし、台湾でのフィールドワークに参加し、さまざまな人との出会いを通して、異なる価値観を共有することは自然と相手との距離を縮めるための方法であると思えました。わたしがこう思えたのにはさまざまな理由があると思いますが、振り返ると、相手のことをもっと知りたい、相手の立場になって物事を考えられるようになりたいと思ったのがひとつの大きい理由だと思います。

日本語教育とのつながり

 学部3年の冬頃、将来のことを考えていたときに、ふと台湾での出来事を思い出し、台湾での出会いと学びを通して得たものがわたしにとってはとても大きいものであったのだと気が付きました。そして、日本語教育の道に進んだら、もっとたくさんの出会いと学びがあり、自分も成長できるのではないかと思い、東京女子大学の大学院に進学し、日本語教育を専門に学ぶことを決めました。

 日本語教育の分野でさまざまな経験を積んで、多くの人と出会いたいと思ったわたしは、学部4年のときから、難民的背景をもつミャンマーの方との日本語活動(VEC日本語活動https://villaeducationcenter.webnode.jp/)や、外国につながる子どもたちへのオンライン教科学習支援の活動に参加するようになりました。大学院に進学してからは、日本語学校で非常勤講師をつとめたり、定時制高校で外国につながる生徒への日本語指導をしたりと、より多くの場でさまざまな人と出会い、関わりを持つようになりました。VEC日本語活動に参加してくれる参加者やオンライン学習支援の子どもたち、日本語学校の学生や定時制高校の生徒たちは、ひとりひとり育ってきた環境が異なり、持っているものもさまざまです。また、わたしはそれぞれの活動や仕事で求められることが異なるので、わたし自身もさまざまな「私」を出しています。

 わたしは、相手や自分が多様であるからこそ、異なる価値観を共有することは、日本語教育ではとても大切であると感じています。今、わたしがこのように感じているのは、台湾での出会いと学びがあったからです。台湾で学んだことは、その後のわたしの人生に大きな影響を与え、今でも確実に活きています。今後も日本語教育の道を進む者として、台湾での学びは大切にしていきたいと思っています。

最後に…

 わたしは、台湾でのフィールドワークに参加して、さまざまな人と出会い、異なる価値観を共有することが大切であることを学びました。そして、そのことがきっかけで、今は日本語教育の道に進んでいます。日本語教育において、わたしは、まずは相手のことを知ることが大切だと思うので、そのためにもできるだけお互いの異なる価値観を共有することを常に心がけています。

 みなさんは学生時代に、どんな学びを得て、どんなことを大切にしていますか?ふと思い出したことが、それがみなさんにとってとても大きな存在かもしれません。

みなさんの充実した学びと今後の活躍を心から願っています。