上海外国語大学の日本研究

上海外国語大学日本文化経済学院院長・教授 高潔 

 上海外国語大学の日本語学科は1959年に成立して以来、ずっと日本語教育に力を注いできました。それで、1990年代半ばごろまでは、日本語教材の編纂、日本語教授法、日本の文学作品の翻訳などがメインでした。1970年代の『上海市大学教材 日本語』、1980年代の『大学教材 日本語学部用 日本語』、1990年代の『新編日本語』、そして21世紀に入ってからの『日本語総合教程』などの教材シリーズはいずれも中国の日本語教育界で広く使われてきた教科書です。

 2000年以降、新入教師が博士号の取得者でなければならないという政策が出てから、本格的な研究が徐々に進んできました。最初は依然として、日本語学、日本近現代文学の研究が多かったですが、日本の経済、社会、教育、大衆文化、古典文学などの分野の研究が徐々に増え、2015年、教育部認可の日本研究センターが設立されて以来、日本の歴史、日中関係などの分野の研究も大きく発展しました。

 2017年、上海外国語大学の外国言語文学学科が教育部認定の一流学科(トップスリー)に入選しました。教育部の“新しい文科”という建設方針に基づき、外国言語文学学科は言語学、文学、翻訳、比較文化と異文化コミュニケーション、地域国別研究という五つの研究分野に分けられ、日本研究も伝統的な日本語学、日本近現代文学研究の外に、近年特に、中日比較言語学、中日比較文学、中日比較文化、日中外交史の研究に力を入れています。国家哲学社会科学基金研究プログラム、教育部人文社会科学研究プログラム、上海市哲学社会科学基金研究プラグラムなどに入選し、現在進行中の主なものを以下の表でまとめてみました。

大正期文学における中国像

近代中日文化交流の媒介者――内山完造研究

中日遁世文化の比較研究

日本所蔵の宋元画研究

近代における中日両国の洋学受容の比較研究

日本語の格助詞についての研究

中国語と日本語の文法特徴の比較研究:類型学からのアプローチ

中日情態類型学研究

データマイニングに基づく中国における日本語学習者の認知システム研究

海洋政治問題研究

 以上の研究プログラムからもわかるように、日本語学科の研究は、中日両国の言語、文学に限らず、幅広い面で比較研究を展開しています。いずれも、研究者の語学力、日本の事情に詳しいなどのメリットを生かし、中日両国に通用する研究を目指しているのです。

 教員の研究以外にも、博士後期課程の学生は毎年、7名ぐらい募集し、募集人数からして、中国の大学の日本語学科でトップクラスに属しています。学位取得後、卒業生はほとんど中国各地の大学に就職し、次世代の研究者に成長していくのです。

 研究以外に、また翻訳の面でも、日本近現代文学の中国語訳(上海市翻訳家協会会長担当)、“中国学術書対外翻訳プログラム”推薦の学術書の日本語訳を積極的に進めております。